渡邉医院

痔瘻に対して手術を施行した889例の部位別最大肛門静止圧の比較検討

 台風19号は大きな被害を各地に与えました。被災された方々には本当にお見舞い申し上げます。早期の復興をお祈り申し上げます。
 私は無事に京都に帰ってきました。今日の朝、新幹線で帰ってきました。在来線が動かない中、初めて経験した誰もいない東京駅。新幹線だけが動いている中帰ってくることが出来ました。
 台風の中いろんな経験をしました。初めての学会の丸まる1日のプログラムの中止。
 台風の中どこも行くことが出来ない中、早い時間のホテルへのチェックイン。3時チェックインまで、ホテルの方のご好意で、宴会場を開けていただき、チェックインまで快適な空間を与えて下さったことへの感謝。いろんな経験をしました。
 残念ながら学会では発表できませんでしたが、ホームページでパワーポイントを使って発表できなかった演題を報告したいと思います。

日常の診療を行うにあたって、痔瘻は肛門の締まりが強い患者、すなはち括約筋の緊張が強い患者に多いという印象があります。実際、痔瘻において、最大肛門静止圧は高く、また、若い男性に多く発生するのも、このことに起因すると考えています。

今回、痔瘻の発生部位によって、最大肛門静止圧に差があるのかについて検討しました。

対象は、平成1010月から平成312月までに痔瘻の手術をした889例、男性778例、平均年齢41.0歳。女性111例、平均年齢42.4歳を対象としました。

 

痔瘻の発生部位を前方、後方、側方の三つに分けました。11時、12時、1時を前方、5時、6時、7時を後方、2時、3時、4時、8時、9時、10時を側方としました。そして、それぞれの最大肛門静止圧について比較検討しました。

 

対象とした889例中、男性は788例、87.7%。女性は111例、12.3%と圧倒的に痔瘻は男性に多く認めました。

 

痔瘻の発生部位をみると、男性では、前方105例、13.3%。後方526例、66.8%。側方157例、19.9%と後方が全体の約70%を占めました。これに対して女性では、前方29例、26.2%。後方55例、49.5%。側方27例、24.3%と男性と比較して側方、前方が多い傾向がありました。

 

年齢についてみると、男性では、前方41.0歳、後方42.8歳、側方39.3歳と側方でやや年齢が低い印象はあるが明らかな差は認めませんでした。

女性では前方42.3歳、後方43.3歳、側方41.6歳と各部位で明らかな差は認めなかった。また男女差も認めなかった。

次に、痔瘻発生部位別の最大肛門静止圧をみると、男性では、前方127.5mmHg、後方127.7mmHg、側方125.2mmHgと側方でやや低い傾向はあるものの、それぞれの部位で明らかな差は認めませんでした。

女性においては、前方98.0mmHg、後方84.8mmHg、側方93.6mmHgと男性と比べてすべての部位の最大静止圧は低く、また後方の最大静止圧がやや低い傾向にありましたが明らかな差は認めませんでした。

 

まとめです。

今回、痔瘻の発生部位別の最大肛門静止圧を比較検討する際に、側方の痔瘻において最大肛門静止圧が後方より低いのではないかと考えていました。しかし、今回の検討の結果では各部位とも男女とも最大肛門静止圧に明らかな差は認めませんでした。痔瘻の発生部位では、男性と比較して女性では前方、側方がやや多い傾向にありました。

男性と女性の最大肛門静止圧をみると、明らかに女性の方が低く、女性の痔瘻に対して痔瘻根治術を施行する場合は、より術後の機能温存に注意を払い手術を施行する必要があると考えます。