渡邉医院

第74回日本大腸肛門病学会学術集会を終えて。Part2

 台風だけでなく、さっきは地震がありました。震度3だそうです。自然の驚異を感じます。
 さて、今回は第74回日本大腸肛門病学会学術集会に参加してPart2を報告しますね。
 前回、「肛門病変への対応」の途中で終わりました。今回はその続きからです。
 このセクションに「肛門狭窄と痔核の併存症例に対するSSG+ACL療法の検討」という演題がありました。SSGSliding skin graftといって以前ホームページでも紹介しましたが、裂肛や肛門狭窄に対して行う手術です。
ACLAnal cushion liftingといって内痔核の手術の一つで、内痔核を切除することなく、脱出する内痔核をもとの位置に戻して固定するという手術です。私は行っていません。
 裂肛と内痔核を合併している場合はどのよう手術するかという内容です。この場合もケースバイケースだと思います。内痔核が7時(右後ろ)にあって、裂肛が6時(後方)にある場合は、内痔核を切除しながら裂肛によって硬くなった部分を切除して、緊張の強くなった括約筋の緊張をとる。場合によっては内痔核を切除した部分で括約筋を一部切開して緊張をとったり。内痔核の部位と裂肛の部位によっては内痔核に対して痔核根治術を行い。括約筋を切開するLSIS(渡邉医院では3時、左側で行います)を追加することがあります。ただ、肛門が硬く広がりが悪く硬い感じになってしまった場合は、痔核根治術とSSGを行うことがあります。痔核根治術を行った部分を利用してSSGを行うこともあります。
 患者さん一人一人の裂肛や内痔核の具合や部位、肛門の硬さ広がり具合などを診ながら最適な手術を行うことになります。
 ただ、肛門の手術を行う場合に一番大切なことは、どんな病気でも手術を行った後、肛門が柔らかく治っていくことがとても大切なことだと思います。そのためには、肛門の解剖をしっかり理解することが大切だと思います。

 肛門という特殊性をしっかり考えて治療すること、このことを怠ると、術後の変形や機能不全に陥りやすいということをしっかりと注意していくことが必要です。

 「Pagetoid spread を伴う肛門管癌に対して腹腔鏡下括約筋間直腸切除術を施行した1例」という演題もありました。
 肛門にも悪性腫瘍が発生することがあります。肛門に近い部分にできる直腸癌や今夏の演題の様に肛門管癌であったり、肛門管から外側に広がる癌であったり、悪性黒色腫など様々な悪性腫瘍ができることがあります。肛門に近い部分(肛門縁から約10cm奥まで)の直腸癌や肛門癌は触診や視診で分かりますが、それ以外の特殊な悪性腫瘍はそんなに頻度はありません。でも一度写真でもいいので画像を見ているか見ていないかでは全然違います。またなにかおかしいと感じることもあります。そういった意味では、肛門疾患の様々な画像や写真は見ておいた方がいいと思います。
 ポスターセクションにも行ってきました。ここにはいろんな症例の写真があり、勉強になります。

 Part2はこのあたりにしておきます。次は便秘や腸内細菌叢の話を聞いてきたので報告したいと思います。