お盆休みの期間になりました。帰省される方、旅行に行かれる方、家でゆっくりと過ごされる方などお盆休みの過ごし方はいろいろあると思います。でも、8月になって本当に厳しい暑さが続いています。出かける際も暑さ対策をして気をつけて外出してくださいね。
そしてもう一つ気になるのが、台風の今後の進路、状況です。こちらも注意が必要ですね。
渡邉医院はこのお盆休み中も16日の金曜日の夕方の診察だけは休ませていただきますが、そのほかは通常通りに診療をしています。お尻の具合の悪い方は受診してくださいね。
さて、最近「肛門の周りが痒い。」という症状で受診される方が少し増えたかなあと感じます。そこで、今日は肛門の周囲が痒くなる肛囲皮膚炎について少しお話したいと思います。
肛門だけでなく「痒い!」という症状はとてもつらい症状です。24時間1日中痒いわけではありませんが、お風呂に入った時や後、またお布団に入って寝ようとする時。また少しお酒を飲んだ時など、本来は気持ち良くなる時に痒みが襲ってきます。そして痒いのでついつい掻いてします。「掻いちゃダメなのに掻いてしまった。」という罪悪感も生まれて、とてもつらい症状、病気だと思います。「痒いのを掻くな!」これは無理だと思います。まだ、「痛いのを我慢して。」の方が我慢できます。ですから早く皮膚炎を治して症状をとって、痒みをなくすのが大切だと思います。
さて、肛門が痒くなる肛囲皮膚炎の原因ですが、なかなか難しいところもあって、原因が特定できない場合もあります。でも痒くなる原因の多くが次の三つだと思います。
- 1)お風呂に入った時に、石鹸でタオルでゴシゴシ洗う。
まず原因の一つが入浴時に石鹸でタオルでゴシゴシ洗うことです。どうしても清潔にしなければいけないという思いが強くなるため、入浴時に一生懸命に洗ってしまう。これも一つの原因になります。肛門が痒いときにゴシゴシ洗うと、洗っているときは気持ちいいいのですが、かえって皮膚炎を悪くしてしまいます。また一生懸命に洗うことで、皮膚を守っているバリヤーも壊してしまいます。気になるかと思いますが、お湯だけで軽くサッと洗うだけにした方がいいです。これは皮膚炎が治った後も同じです。
- 2)排便後、トイレットペーパーでゴシゴシ拭いたり、洗浄便座で必要以上に洗浄すること。
もう一つの原因が排便後の処置です。どうしても排便後汚れをしっかり取ってきれいにしようと思い出、トイレットペーパーでゴシゴシ強く拭いてしまいがちです。どうしても強くゴシゴシ拭くと、肛門の皮膚に傷が付いたり、そこに汚れを擦り込むようになってしまいます。あまり強くゴシゴシは拭かない方がいいです。洗浄便座であれば、軽く洗浄して軽く拭く程度にしておくことがいいです。ただ、洗浄すると、段々その水圧が強くなったり、一生懸命に洗浄してしまうことがあります。あまり強い水圧で洗浄すると、肛門に傷を付けてしまったり、直接肛門に強い水圧で温水があたると、温水は直腸の中に入っていってしまいます。入った温水はどうなるかというと、後から出てきて反って汚れてしまったり、そのことで肛門が痒くなってしまうことがあります。以前、「温水洗浄便座の功と罪」というお話をしたことがあります。詳しくはそちらの記事を読んでいただければと思います。
温水洗浄便座はあまり強く洗わず、軽く洗って軽く拭くようにするのがいいと思います。
- 3)消毒液などの薬でお尻を拭くこと。
最後は、消毒液やお薬でお尻を拭くことです。どうしてもお風呂で一生懸命石鹸で洗っても、洗浄便座で一生懸命洗っても痒みが取れないと、もっと清潔にしなければという思いで、消毒液やお薬で拭いてしまう人がいます。消毒してしまうと必ずひふの具合が悪くなって皮膚炎になってしまいますし、皮膚炎を悪くしてしまいます。消毒するときは「自分の体を犠牲にしてまでも」という言葉を最初につけるとよくわかります。
例えば手術をする際に消毒するときは、自分の皮膚に負担はかかるが、体の外の細菌が、無菌の状態の体の中に入って欲しくないので消毒する。また、転んで怪我をした時は、傷の治りは悪くなるが、どんな細菌がいるかわからないので、しっかり洗浄した後に消毒する。こんな話を皮膚科の先生に聞いたことがあります。「耳たぶに皮膚炎があって、いろんな軟膏を使ってけど全然よくならない。おかしいなと思って、軟膏を付けるときはどうゆう風に付けていますか?ときいたところ、患者さんは軟膏を塗る前に必ず消毒してから軟膏を塗っていますと。この消毒が治らなかった原因で、消毒をしないで軟膏を塗ってもらったら、直ぐに治った。」と。このように、消毒するとどうしても皮膚には良い影響はあたえません。皮膚炎の原因になったり、皮膚炎をこじらせることがあります。
後は肛門は便が通るところなので、下痢が続いたり、排便の状態にも原因があることがあります。でもまずはこの三つの原因が無いかどうかを考えてみてもらって、もしも思い当たるところがあればまずはそれをやめて、正しく軟膏を塗っていくと肛囲皮膚炎は治っていきます。
軟膏の塗り方
最後に軟膏の塗り方をお話します。
「痒い!」という症状は皮膚炎になったから直ぐに出るというわけではありません。ある程度皮膚炎が進んでくると痒いとかしみるなどの症状が出ます。まずは原因となることを気をつけてもらって軟膏を塗ってもらうと皮膚炎は治ってきます。でも治るときは皮膚炎が完全に治る前に症状が取れてきます。痒みがなくなって治ったと思っても、実施はまだ皮膚炎が残っていることがあります。ですから、軟膏を塗って、痒みなどの症状が取れてもまだ皮膚炎は治っていないと考えてもらって、症状がなくなってからもしっかり塗ることが大切です。
なかなか自分んで皮膚炎が治ったかどうかを判断することは難しいです。症状がなくなっても、軟膏は塗り続けて、軟膏がなくなったら、一度診察を受けて、症状が取れただけなのか、皮膚炎が治ったのかを診察してもらうことが大切です。そして治ってしまったら、原因と考えることを気をつけていけば、またぶり返すことはないと思います。
私も原因の二番目のトイレットペーパーでゴシゴシで痒くなったことがあります。ゴシゴシしないように気をつけて、もらった軟膏をつけたら治ってしまいました。そしてぶり返していません。私が治ったので肛門の痒みで悩んでいる方もきっと治るはずです。一度受診してみて下さいね。