渡邉医院

手術を進める右手、「場」をつくる左手。

 10連休というゴールデンウイークが始まり、そして平成に代わり令和になりました。でもなんとなく天気は不安定でよくありませんね。連休後半を期待したと思います。
 さて、今回は手術をする際の右手と左手の役割についてお話したいと思います。利き手の右手だけでなく。左手の役割が、手術を上手く、美しく進めるのに大切です。

手術を進める右手、「場」をつくる左手

 
私は右利きですので、メスやハサミを持つ手は右です。右手で組織を剥離したり、切除していきます。でもこの時に大切なのが左手です。手術が上手くいく行かないは左手にかかっているといっても過言ではありません。右手は手術を進めていく役割、左手は手術を進めていくための「場」をつくる役割があります。この二つが具合よく合わさることで手術を進めていくことが出来ます。

内痔核の手術の場合。

 
例えば内痔核の手術をする際に、コッヘルといって、組織を把持する器械があります。
 
まずは内痔核を切除する際にドレナージをつくろうと考えるところに、肛門縁とそこから少し離れた部分をコッヘルで把持します。この2本のコッヘルを左手がもってそれを具合よく緊張をかけながら、右手に持ったハサミで皮膚を剥離していきます。この際にハサミでジョキジョキ切っていくのではなく、左手が持っているコッヘルを具合よく緊張を持ちながら引っ張り、突っ張っている組織や靭帯を切るというよりは剥がしていくようにハサミを使うと、きれいに内痔核の根元まで剥離していくことが出来ます。
 この時右手のハサミで切るではなく、左手のコッヘルを引っ張り剥がしていくといったイメージです。そうすることで手術創からの出血も少なく手済みます。どうしてもハサミで切るといった具合に進めていくとどうしても深い層に傷が進んでいき、出血の量が増えてきます。どちらかというと左手のコッヘルを引っ張ることで剥がすことが主体で、右手のハサミがそれを補助するといった感じです。また右手のハサミで組織を剥離したり切除する際に左手の指の感覚で、突っ張っているところを見つけ、そこを剥離切除を進めていくと内痔核が肛門の外に出てきて、内痔核の根部にある動脈を縛りやすくなります。このように十分に周りの組織から内痔核を十分に剥離して根部を結紮することで、術後の痛みも軽減します。

痔瘻の手術の場合。

 
また痔瘻の際は、左手の指で痔瘻の原因である原発口を確認しながら痔瘻の瘻管を剥離していきます。痔瘻の手術の際は二次口からメスやハサミで瘻管を剥離していくのですが、術中にその剥離が進んでいる瘻管を引っ張ることで、原発口が確認出来たり、左手に指で原発口を確認しながら瘻管を摘出していきます。このように左手は、手術の「場」をつくり、手術を誘導していく重要な役割を担っています。

止血の場合。

 
また、手術中の止血をする際も重要な役割をします。右手にはバイポーラといって凝固して止血する鑷子を持っています。このバイポーラで出血している部位を止血していきます。
 
その際にやはり左手は止血する「場」をつくる役割をします。指で手術をしている創を広げて、出血している部分がしっかりと確認できるようにします。この「場」が十分にできないと、なかなか止血することが難しくなります。やたらめったらバイポーラで凝固しても止血はできません。十分に「場」をつくり、出血部位が十分に確認できるようにして、ワンポイントで止血していきます。
 
このように、手術を進めていく右手、止血する右手。そしてそれを容易にするためにしっかりと「場」をつくる左手。この両方がしっかりとその役割を果たすことで手術が上手く、美しくですすめていくことができます。

話は変わりますが、私たちにとっても、そういった良きパートナーが必要なんだなと感じます。それぞれの役割をしっかり果たすこと、そしてそのどちらが欠けてもいけない。そんな関係が持てるパートナーがいるといいですね。