ここ数日グッと冷え込んでますね。そろそろ寒さもピーク、明日からは段々温かくなるようですね。この寒さで、桜もこの週末が満開で見ごろかなと思います。私はまだ、お花見に行っていません。今週どこかで行きたいと思っています。
さて、今年の日本大腸肛門病学会は10月11日から10月12日の二日間、東京のヒルトン東京お台場で開催されます。今回のテーマは「こだわり KODAWARI-Show your originality!」です。今回も参加しようと思います。
今回は例年より1か月早い10月の開催です。そのため、学会での発表内容の抄録の締め切りが3月末でした。
今年も発表しようと思い、抄録をつくり送りました。抄録が採用されるかどうかはまだわかりませんが、今回の発表内容について少し紹介しようと思います。
今回は痔瘻に関しての発表をしようと思い、渡邉医院のデーターを調べ抄録を作りました。
演題名は「痔瘻に対して手術を施行した889例の部位別最大肛門静止圧の比較検討」です。
痔瘻の患者さんは、最大肛門静止圧が高い傾向にあります。最大肛門静止圧が高いということは、内肛門括約筋の緊張が強い、すなわち肛門の締まりが強いということです。こういったこともあって、痔瘻はどちらかというと男性に多く発生します。渡邉医院でも、約7対1の割合で男性に多いです。また年齢的にも若年者に多く発生します。
痔瘻の多くは肛門の後方に発生しますが、側方や前方にも発生することがあります。今回は痔瘻の発生部位で最大肛門静止圧に差があるのか、ないのかを比較検討しました。
検討する前の予測としては、後方に痔瘻が発生した患者さんの方が、側方や前方に痔瘻が発生する患者さんよりも最大肛門静止圧が高いのではないか。したがって、後方の痔瘻の手術をするとき以上に側方や前方の痔瘻の手術をする際には、機能の温存に注意しながら手術をしなければならないのではないかという仮説の元で検討しました。
結果としては後方も側方も前方も、最大肛門静止圧には有意な差はありませんでした。ただやはり男性の患者さんの方が女性と比較して最大肛門静止圧は高い傾向にありました。このことから、女性の痔瘻の手術をする際は男性と比較して機能の温存により注意しながら手術をする必要があります。また、後方、側方、前方とも最大肛門静止圧には差がありませんが、解剖学的に部位によって肛門は状況が違ってきます。こういったことからも側方や前方の痔瘻に対して手術する際には機能面や手術による肛門の形態的な面に注意しながら手術を施行していく必要があると考えます。
まだ採用されるかわかりませんが、抄録を紹介します。また詳しい内容やパワーポイントなどはまた紹介しますね。
抄録
日常の診療を行うにあたって、痔瘻は肛門の締まりが強い患者に多い印象がある。実際、痔瘻において、最大肛門静止圧が高く、若い男性に多く発生するのも、このことに起因すると考える。今回、痔瘻の発生部位によって、最大肛門静止圧に差があるのかについて検討した。【対象】平成10年10月から平成31年2月までに痔瘻の手術をした889例(男性778例、平均年齢41.0歳。女性111例、平均年齢42.4歳)を対象とした。【方法】痔瘻の発生部位を前方(11時、12時、1時)、後方(5時、6時、7時)、側方(2時、3時、4時、8時、9時、10時)に分け、それぞれの最大肛門静止圧について比較検討した。【結果】889例中男性は788例、87.7%。女性は111例、12.3%と圧倒的に男性に多かった。男性において発生部位を比較すると、前方105例、13.3%。後方526例、66.8%。側方157例、19.9%と後方が全体の約70%を占めた。これに対して女性では、前方29例、26.2%。後方55例、49.5%。側方27例、24.3%と男性と比較して後方が全体の約50%を占めるものの、発生率が少なかった。年齢について比較すると、男性では、前方41.0歳、後方42.8歳、側方39.3歳と側方でやや年齢が低い印象はあるが明らかな差は認めなかった。女性では前方42.3歳、後方43.3歳、側方41.6歳と各部位で明らかな差は認めなかった。また男女差も認めなかった。次に、男性女性の痔瘻発生部位別の最大肛門静止圧を比較すると、男性では、前方127.5mmHg、後方127.7mmHg、側方125.2mmHgと側方でやや低い傾向はあるものの、それぞれの部位で明らかな差は認めなかった。女性においては、前方98.0mmHg、後方84.8mmHg、側方93.6mmHgと男性と比べてすべての部位の最大静止圧は低く、また後方の最大静止圧がやや低い傾向にあるが、明らかな差は認めなかった。【考察】今回、痔瘻の発生部位別の最大肛門静止圧を比較検討する際に、側方の痔瘻において最大肛門静止圧が後方より低いのではないかと考えていたが、結果は各部位とも男女とも最大肛門静止圧に明らかな差は認めなかった。ただ男性と女性の最大肛門静止圧をみると、明らかに女性の方が低く、女性の痔瘻に対して痔瘻根治術を施行する場合は、より術後の機能温存に注意を払い手術を施行する必要があると考える。