渡邉医院

皮垂(スキンタッグ)の治療、手術について

 今回は皮垂(スキンタッグ)の治療、手術についてお話します。

皮垂って病気?症状は?

  肛門科の外来を受診される患者さんのなかに、皮垂(スキンタッグ)が気になるという訴えで受診される方がいらっしゃいます。「肛門に何かしわのようなものがあるのが気になる」とか、「肛門にいつも何か出ている。」などの症状を訴えられます。またこの皮垂があることで排便後肛門が拭きにくいとか、一生懸命に拭くことで肛門が痒くなったりしてしまう患者さんもいます。
 皮垂は、肛門の皮膚のしわなので、ここから出血したり痛くなったりはしません。ですから必ず手術して取り除かなければならない病気ではありません。でも、いつもいつもこの皮垂が気になったり、なんとなくべたつくような症状がでたり、不快感をもたらすことがあります。
 ときどき患者さんが、医療機関を受診した際に、「皮垂は悪い病気ではないので、取る必要はない。」と言われたが、やはり気になり、何とか治したいということで渡邉医院を受診される方がいます。その先生がおっしゃる通りに、皮垂は悪いものではありません。

皮垂の切除

 皮垂は必ず取る必要はありません。でもいつもいつも皮垂が気になる。それが原因で拭きすぎて肛門が痒くなる。など、やはり患者さんにとって嫌な症状であることも確かです。皮垂があることでの不快感。いつも気になることでの精神的な負担がある場合や何か症状がでる場合は、皮垂を切除するといいと思います。

皮垂を切除することでのデメリットは無いと考えます。

皮垂は皮膚のしわですので、皮垂を切除したからといって、肛門の締まりが悪くなることもありませんし、肛門の機能が悪くなることもありません。自分が気にしているものがなくなるだけですので、皮垂を切除することで、肛門の機能に関しては何のデメリットもないと考えています。また、皮垂を切除する場合は、皮膚のしわを取るだけですので入院の必要もありません。

皮垂の原因には色々あります。

 さて、皮垂といってもその皮垂のできる原因にはいろいろあります。例えば、裂肛(切れ痔)を繰り返すことで、裂肛ができる外側に皮垂ができる場合。また、内痔核が腫れたり治まったりすることで内痔核のできる外側に皮垂ができる場合。また、血栓性外痔核の血栓が溶けて吸収した後にできる皮垂など、皮垂が出来る原因にはそのもとになる肛門の病気があります。やはり、皮垂を切除する場合には、その皮垂ができた原因もしっかり治していく必要があります。ただこれまで皮垂のできる原因を調べ、学会でも発表してきましたが、やはり裂肛や内痔核などでできる皮垂は、裂肛や内痔核に血栓が合併して、その血栓が溶けた後の皮膚の弛み、しわになって皮垂になっていくのではないかと思います。また内痔核の場合は、内痔核が単独で腫れる場合もありますが、内痔核と一緒に外痔核部分も腫れ、内外痔核の腫脹を繰り返すことで、外痔核部分の腫脹の後に皮垂が出来ると思います。
 このように、皮垂といってもそのできる原因にはいろいろあります。その原因によって皮垂の切除の仕方は変わってきます。

裂肛が原因での皮垂

 裂肛の場合は、裂肛が出来る部位が肛門の前後、時計でいうと6時と12時の方向にできます。したがって、裂肛による皮垂は6時と12時にできます。この皮垂を切除する場合、どうしても手術でできる傷の場所が、真正面、真後ろにできてしまうと、傷の治りが悪くなってしまいます。ですから、皮垂の部位をみながら、左右どちらかにずらして皮垂を取る必要があります。また裂肛がまだある場合は、排便時に傷が治りやすいように、十分なドレナージとなるように皮垂を切除する必要があります。

内痔核が原因での皮垂

 次に内痔核の場合は、皮垂が肛門上皮に連続している場合が多いので、肛門の外側の部分だけ切除すると、手術後腫れがでてきて、それがまた皮垂になってしまいます。そこで、外側だけでなく、少し肛門上皮まで切り込んで皮垂を切除していく必要があります。行ってみれば、内痔核に対しての痔核根治術をするような要領で皮垂を切除していくことが大事になってきます。ですから、排便時にどうしても肛門上皮に傷ができるので痛みがあります。でも内痔核の手術同様に、術後7~10日間を過ぎるとスッと痛みが取れてきます。

血栓性外痔核が原因での皮垂

 血栓性外痔核が原因での皮垂は、血栓が詰まった部位によって皮垂の切除の方法はちがってきます。皮垂の状態をみて切除する必要があります。

皮垂を切除する場合は、治りやすい傷の大きさ、形が大事

 いずれの場合も、皮垂だけを切除するだけでは、具合よく、予定通りに傷は治っていきません。切除した傷が治りやすい大きさ、形を作っていかなければなりません。小さくとるよりは、少し大きめに切除したほうが具合よく治っていきます。

皮垂の原因を治すことが大切

 最後に、皮垂が出来た原因となる肛門の病気。裂肛や内痔核などをしっかり治療していくことが一番大切です。
裂肛が原因での皮垂を切除する場合は、皮垂を切除した後も再度裂肛を繰り返すことで、また新たに皮垂が出来てしまいます。また裂肛の治療が十分にできていないと、皮垂を切除しても、裂肛が治らず、裂肛の症状としての排便時の痛みなどが続いてしまうことがあります。
 内痔核も同様です。内痔核が十分に治療できていないと、内痔核が腫れたり治まったりすることを繰り返すことで、また皮垂が出来てしまいます。
 気になる皮垂を切除するとき、そして切除した後は、皮垂の原因となった肛門の病気もしっかり治していきましょう。
 次回は、皮垂の切除や術後の経過などをお話したいと思います。