渡邉医院

75歳以上と未満での内痔核に対する外科的治療に関しての比較検討(第71回日本大腸肛門病学会)

 今回は、第71回日本大腸肛門病学会での発表内容を紹介します。
 演題名は「75歳以上と未満での内痔核に対する外科的治療に関しての比較検討」です。
医療保険では75歳以上は後期高齢者健康保険になります。年齢によって手術の術式に違いがあるかについて検討しました。
 発表内容と抄録を紹介します。

「発表内容」

 今回、渡邉医院で内痔核に対して施行したALTA 療法、痔核根治術(LE)、そして輪ゴム結紮法について、後期高齢者の75歳以上と75歳未満との間で比較検討しました。
 対象は、平成191月から平成2712月までに内痔核に対して外科的治療を行った3124例としました。
 検討項目として、一つは対象期間のALTA療法、LE,輪ゴム結紮法の症例数の変動、そして二つ目として75歳以上と未満との間で、ALTA療法とALTA療法以外、LELE以外、輪ゴム結紮法と輪ゴム結紮法以外について比較検討しました。
 まずは75歳以上と未満の手術症例の年別症例数の推移ですが、75歳未満では、平成23年以降ほぼ症例数には変化を認めません。75歳以上では平成23年から徐々に増加傾向にあります。やはり高齢化を反映していると思います。この傾向は今後も続くと考えます。
 ALTA療法の年度別推移ですが、75歳未満では平成19年から徐々に増加傾向でしたが、平成23年をピークに徐々に減少傾向にあります。75歳以上では、ほぼ同数で推移しています。
 LEの年度別推移ですが、ALTA療法の推移に反映して、平成23年までは徐々に減少傾向でしたが、平成23年以降は徐々に増加傾向にあります。この傾向は75歳以上にもあてはまるのではないかと思います。これは平成19年からALTA療法をはじめ、再発に対してのLEや、ALTA療法とLEとの適応の判断が決まってきたからだと考えます。
 輪ゴム結紮法の年度別推移です。平成25年から75歳以上、未満とも増加傾向にあります。これもALTA療法後の再発に対しての輪ゴム結紮法などが増えているからかと思います。
 また75歳以上の内痔核は静脈瘤型というよりは粘膜脱型が多く輪ゴム結紮法の適応となることが多いことも影響していると考えます。
 ALTA療法とALTA療法以外との間で比較すると、75歳未満で有意にALTA療法が多い結果でした。
 LELE以外を比較すると、75歳以上で有意にLE以外が多く認めました。
 輪ゴム結紮法と輪ゴム結紮以外を比較すると、75歳未満で有意に輪ゴム結紮法以外が多く認めました。
 以上から、75歳以上では、75歳未満と比較して、ALTA療法やLEよりも輪ゴム結紮法が多く、75歳未満では、ALTA療法やLEによる治療が75歳以上より多い結果でした。
 まとめです。
 175歳以上では、H19年からH27年までの9年間でALTALEの症例には大きな変動を認めなかったが、RBLの症例が増加した。
 275歳以上ではLE以外の症例が84.5%であった。
 この要因については、一つは高齢者の内痔核の性状にあるのではないかと考える。静脈瘤というよりはむしろ粘膜の脱出が主となる症例が多く、輪ゴム結紮法の適応となる症例が多いのではないかと考える。また、なるべく侵襲を少なくしたいという意図も影響していると考える。今後、後期高齢者である75歳以上の患者が増加し、これに伴って外科的治療が必要となる症例も増加することが予想される。術式の選択など十分に適応を判断していかなければならない。

「抄録」
 内痔核に対して施行したALTA療法(ALTA)、痔核根治術(以下LE)、輪ゴム結紮法(以下RBL)について、後期高齢者の75歳以上と75歳未満との間で比較検討した。【対象】H191月~H2712月までに外科的治療を行った3124例を対象とした。【検討項目】対象期間のALTALERBL症例数の変動。75歳以上と未満で①ALTAALTA以外、②LELE以外、③RBLRBL以外で比較検討した。【結果】ALTALERBLの症例数の変動は、ALTAでは75歳以上では9年間大きな変動は認めず、75歳未満ではH23年以降減少の傾向にある。LEでは75歳以上では大きな変動はなく、75歳未満で、ALTAが減少するのと一致して微増した。RBLでは75歳以上、未満いずれもH25年から増加傾向で、特に75歳以上で著明であった。①ALTAではと、75歳以上ではALTA252例(50.6%)、ALTA以外は246例(49.4%)、75歳未満ではALTA1541例(58.7%)、ALTA以外は1085例(41.3%)と、いずれもALTAがやや多く、75歳以上で75歳未満と比較してALTA以外の割合が多かった。②LELE以外は、75歳以上ではLE77例(15.5%)、LE以外は421例(84.5%)、75歳未満ではLE954例(36.3%)、LE以外は(63.7%)と75歳以上でLEの割合が少なかった。③RBLRBL以外は、75歳以上ではRBL169例(33.9%)、RBL以外が329例(66.1%)に対して75歳未満では、RBL131例(5.0%)、RBL以外は2495例(95.0%)と75歳以上ではRBLの割合が75歳未満と比較して多かった。【まとめ】今後、後期高齢者である75歳以上の患者が増加し、これに伴って外科的治療が必要となる症例も増加することが予想される。今回、75歳以上と未満とでALTALERBLの症例を比較検討した。H19年からH27年までの9年間で75歳以上ではALTALE、には大きな変動を認めなかったが、RBLの症例が増加してきた。このことの要因については、一つは高齢者の内痔核の性状にあるのではないかと考える。静脈瘤というよりはむしろ粘膜の脱出が主となる症例が多く、RBLの適応となる症例が多いのではないかと考える。また75歳以上ではLE以外が84.5%であることからも、なるべく侵襲を少なくしたいという意図も影響していると考える。今後75歳以上の手術症例が増えることが予想され、術式の選択など十分に適応を判断していかなければならない。