渡邉医院

内痔核に対して外科的治療を施行した4081例の検討(第72回日本大腸肛門病学会)

第1回目は去年、福岡の博多で開催された第72回日本大腸肛門病学会で発表してきた内容を紹介したいと思います。抄録よりも、発表原稿の方がわかりやすいと思いますので、公演の内容を紹介したいと思います。

渡邉医院で内痔核に対して施行した痔核根治術、輪ゴム結紮法、そしてALTA療法について年齢によって違いがあるのか。また男性、女性で違いがあるのかを検討しました。対象は、H18年6月からH29年4月までに外科的治療を行った4081例としました。そのうち、男性は2124例、女性は1957例でした。    

検討した項目は二つです。一つ目は、痔核根治術、輪ゴム結紮法、ALTA療法の年齢別、性別症例数について検討。二つ目はそれぞれの治療法の占める割合を年齢別、性別で比較検討しました。

まず、痔核根治術では、男性522例、24.6%、女性1036例、52.9%でした。痔核根治術は女性において全体の半数以上と多い傾向がありました。痔核根治術は男性では60歳台をピークに増加し、その後減少傾向にありました。女性では30~40歳台にピークと、男性同様に60歳台にも、もう一つのピークを認めました。男性と異なり、30~40歳台にピークがあるのは妊娠、出産が関係していると思われます。

次に、輪ゴム結紮法では男性143例、6.7%、女性298例、15.3%と、やや女性に多い傾向がありました。輪ゴム結紮法は男女とも年齢と共に増加しました。

ALTA療法では男性が1459例、68.7%、女性は623例、31.8%と、痔核根治術とは逆に男性に多い傾向がありました。ALTA療法は男女とも60歳代にピークに徐々に増加を認めました。

次に、それぞれの治療法の占める割合を年齢別、性別で比較検討しました。

痔核根治術は男女とも年齢とともに占める割合が減少しました。特に女性でこの傾向を顕著に認めました。

輪ゴム結紮法は男女とも年齢とともに占める割合が増加しました。しかし、女性では、80歳台以上が全体の54.5%を占め、70歳台以上では、80.8%を占めるのに対して、男性では70歳台以上は25.5%にすぎませんでした。このことは、男性よりも女性の方が痔核になりやすく、症状が長期間にわたることが多いという報告がありますが、女性の場合、年齢とともに粘膜脱型になることが多いのかなとも思います。

ALTA療法では、男女とも年齢間に多少の変動を認めましたが、ほぼ一定の割合でした。

痔核根治術とALTA療法を男女間で比較すると、男性では各年齢層でALTA療法が痔核根治術を上回り、すべての年代で60%を超え一定でした。これに対して、女性では60歳台までは痔核根治術がALTA療法を上回っていました。さらに、すべての年齢層でALTA療法は40%以下で、特に40歳台以下では、ALTA療法は20%台でした。

このことは、男性と女性では内痔核の性状が異なる傾向があるのではないかと思います。今回は検討できていませんが、女性では、皮垂の合併が多い印象、また、外痔核成分の多い症例が多い印象があります。これに対して、男性の場合は静脈瘤型の内痔核が多い印象です。症状で言うと、男性では出血が、女性では出血より痛みが、特に若い人に多い印象です。男女間の内痔核の性状の違いは、肛門静止圧が男性の方が優位に女性より高いという報告や、男性では肛門括約筋や肛門挙筋の発育がよく、排便時に強い腹圧を要するとするという報告があり、こういったことも要因の一つとなるのではないかと思います。今後、検討が必要だと思います。

まとめです。

痔核根治術とALTA療法を比較すると、男性ではALTA療法が痔核根治術を上回り、すべての年齢層で60%以上を占め、女性では痔核根治術がALTA療法を60歳台までは上回り、ALTA療法は全ての年齢層で40%以下であること。

痔核根治術は男女とも年齢とともに減少し、一方輪ゴム結紮法は年齢とともに増加した。

こういった、性別によって、また年齢によっての内痔核の性状の違いなどを、今後さらに検討していく必要があると思います。そして、内痔核に対しての外科的治療を選択する際、根治度と共に、内痔核の性状や患者個々の身体的状態なども考慮しながら、適切な治療方法を選択していく必要があると考えます。