渡邉医院

痔瘻ってどんな病気?Q&A方式で。

A:肛門の出口から約2~3㎝奥まで皮膚の部分があります。その奥が直腸です。肛門と直腸との間に肛門腺といって分泌液を分泌する腺があります。痔瘻のはじまりは、まずこの肛門腺に感染が起きて化膿することから始まります。

下痢などをした時に多いですが、肛門腺に細菌が感染して、体の抵抗力が落ちているなどが重なって化膿してきます。膿は組織の弱いところへ広がっていき、肛門の周囲が腫れあがってきます。この状態を肛門周囲膿瘍といいます。この時の症状は激しい痛みと肛門周囲の腫れです。場合によっては39度ぐらいの熱が出ることがあります。自然に破けて膿が出てくることもありますが、大抵の場合、病院や診療所で切開して膿を出します。膿がたまっているということで痛みがあるので、切開して膿を出してもらうと痛みはすぐにとれ、楽になります。

ただ、化膿した原因が肛門の中の肛門腺ですので、また炎症を起こして化膿して膿が広がると困りますので、人間の体はうまくできていて、原因となった部分と切開して排膿した部分との間に、硬い管、瘻管を作ります。硬い管、瘻管が出来ると、原因となった部分に感染が起きて化膿してもこの管を通して外に膿を出してくれるようになります。言ってみると、また化膿しても膿が体に広がらないように、自分の体を守るために自分が硬い管を作って膿が出るようにしてくれるということです。そうすると、硬い管、瘻管が出来てもその後、何の症状もないという人もいます。当院では約7割の人が何の症状もなくよくなっています。何の症状もなければ病気ではないので無理して手術して治すことはありません。ただ痛みが無くても膿が出たり治まったりしたり、化膿して腫れてくることがあるようでしたら、痔瘻の根治術が必要になります。

 

A:痔瘻の原因は肛門腺に細菌が感染して化膿するところから始まります。

下痢や便秘など、排便の状態が悪い時に起きやすいです。どちらかと言えば下痢をしやすい人におおいと思います。また当院では男性:女性が10:1と圧倒的に男性に多い病気です。

 後、クローン病や潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患の人の肛門の症状として痔瘻になることがあります。通常の痔瘻と違って多数の瘻管ができたり、手術治りにくいことが多いです。また基礎にあるクローン病や潰瘍性大腸炎の症状が悪化すると痔瘻の症状も悪化します。

A:手術は感染を起こした肛門腺、と感染巣、そして硬い管、瘻管を取り除くことが基本になります。感染を起こした肛門腺と感染巣を十分に取り除けていない場合に、手術後も完全に治りきらない時があります。また十分に原因を取り除けたとしても傷の治る過程で治りにくい傷になることがあるので、手術後は傷の治りをしっかり診ていく必要があります。

 またクローン病や潰瘍性大腸炎などが原因での痔瘻の場合は、クローン病や潰瘍性大腸炎が治療がされていなかったり、その病気の状態が悪いときに手術をすると、手術後の傷が治らないばかりか術後の傷の状態が悪くなってしまうこともあります。こういった病気をもっている方は、まずはクローン病や潰瘍性大腸炎の治療をすることで痔瘻の症状が良くなります。元の病気が安定してから手術をします。また手術の時も、体に極力負担がかからない手術を選択します。例えばシートン法といって輪ゴムを瘻管に通してゆっくりと絞めていき、数か月かけて治していく方法などをします。この時も輪ゴムをしっかり瘻管と痔瘻の原因に通す必要があります。この手術は治癒まで数か月という期間がかかりますがあせらずじっくり治していくことが大事です。

 何度も可能を繰り返す方は、クローン病や潰瘍性大腸炎などを持っている可能性があります。一度消化器内科の先生に、クローン病や潰瘍性大腸炎が無いかどうかを調べてもらい、もしもあれば症状はよくなります。

 また、膿皮症といって症状は痔瘻によく似ていますが、肛門の周囲や臀部の汗の出る汗腺に細菌が感染して膿が広がり肛門周囲膿瘍と同じような症状が出ることがあります。この場合、硬い管、瘻管が皮下を通ってあちこちに広がることがあります。この場合も瘻管を切除すると治っていきます。痔瘻と一緒にできることがあります。

Q:完治しますか?

A:原因と瘻管がしっかりとりのぞくことができれば完治します。

A:肛門の病気は全て排便の状態だと思います。下痢や便秘が原因となります。気持ちよくすっきり便が出るように心がけることが一番の注意点だと思います。便秘の人は便秘を、下痢の人は下痢を治すことが大事です。